高校野球

第94回センバツ21世紀枠紹介① ~小さな学校の大きな可能性への挑戦!~

只見高校! 小さな学校の大きな可能性への挑戦!!





こんにちは!一般ぱんだです!

久々の投稿となります!実に約2ヶ月半振りの投稿です!(笑)

野球もオフシーズンに入れば、このブログもオフシーズンに入っていました(すいません)

とは言え、野球の方は正確に言えば、まだオフシーズン。(プロ野球のキャンプは始まりましたね)

しかし、1月28日(金)に第94回選抜高校野球大会の出場校が発表されました!

東京からは、國學院久我山二松学舎大付属の2校が選出されました!あの決勝戦を観ていた私からすれば、どちらも報われて本当に良かったなと、心から思います!

さて今回は、そのセンバツの21世紀枠として出場する3校のうち、1校を紹介したいと思います!



只見高校

今回紹介するのは、只見高校(福島県立)です!

戦績

ではまず、只見の秋の戦績を見ていきましょう。

只見の秋の戦い

福島県大会会津支部大会 1回戦 vs会津学鳳 6-7 ●

福島県大会       2回戦 vs白河旭  2-1 〇

福島県大会       3回戦 vs相馬東  7-6 〇(延長11回)

福島県大会       4回戦 vs会津学鳳 7-5 〇

福島県大会       準々決勝 vsいわき光洋 0-6 ●

福島県大会ベスト8

会津支部大会の1回戦で負けた会津学鳳相手に、4回戦でリベンジを果たし、準々決勝進出、見事に創部以来初の福島県大会ベスト8に輝きました!

見方を変えれば、県大会止まりであって、東北大会には進出していません。単純な成績評価で選出される可能性は、ほぼ0です。

しかし、只見高校、いや只見町にとって福島県大会ベスト8がいかに凄いことなのかを、今回はお伝え出来ればと思います!


場所と気候

まず一つは、只見高校の場所と気候です!

只見高校は、名前の通り、福島県只見町にあります。

その、只見高校の場所を地図で見てみましょう。

福島県の西端にあり、新潟県境に近く、福島市からは車で約2時間45分会津若松市からも車で約1時間40分と、県内の街からは決して近くない場所にあります。

そして、積雪により、産業の発展や生活水準の向上が阻害されている豪雪地帯として、「特別豪雪地帯」に指定されるほど、雪がとても多く降ります。

その積雪量は2メートルを超え、学校のグラウンドや町の野球場は、10月中旬から3月まで使えません。

同じく福島県の聖光学院などの私立の強豪校であれば、室内練習場が完備されていますが、残念ながら、県立の只見に室内練習場はありません。

グラウンドが使えない約5ヶ月半は、学校の体育館を他の部活と共有したり屋内駐輪場や屋内通路を使い、工夫をしながら、打撃練習などに励んでいます!

1年のうち約半分、屋外で充分な練習が出来ないのは、他校と比べてやはり、ディスアドバンテージになります。

そんなディスアドバンテージをはねのけ、県大会で3連勝しベスト8まで進出したことは、只見高校だけでなく、只見町民にとっても、凄いことなのです!


少ない人的資源の中での工夫

二つ目に紹介したいのが、「少ない人的資源の中での工夫」です。

ここで言う「少ない人的資源」とは、色々な意味を指します。

まず、只見町の人口ですが、約4,000人と小さな町で且つ、高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)が約47%と、全体的に若者が少なく、過疎化が進む町でもあります。

そんな只見町唯一の高校、只見高校の全校生徒は86人。同じく福島県の伊達市にある聖光学院の全校生徒が590人ですから、その差は約6.9倍になります!

そして、今回選抜に出場する野球部の部員数ですが、マネージャーを含めて15人と、出場校の中では、最も少ない部員数になります!

15人と言うと、選抜のベンチ入りの選手数が18人なので、少なくとも、それより3人少ないことになります。(15人は、マネージャーの数も含んでいるので、実際には3人よりも少ないと思われます)

ちなみに、同じく選抜に出場する聖光学院の野球部の部員数は、76人ですので、その差は約5.1倍になります!

そんな、町民の数も、高校の全校生徒数も、野球部員数も少ない環境「只見」

ですが、只見高校はただ単に町内やその周辺の市町村の生徒だけでなく町立の寮を使い、「留学制度」を利用し、全国から生徒を募集しています。

「留学制度」って、強豪校が県外から有能な部員をスカウトしてくる「野球留学」と同じもの?

という質問が来そうですが、「野球留学」とは違います。

「野球留学」で来る高校生は、その高校の「野球部」の実績や練習環境、指導者などに惹かれて、入学してくる高校生が多いと思います。

大阪の街が好きなので、大阪桐蔭に入学しました!!

という理由で、進学先を決める野球留学生は限りなく少ないと思います(笑)

当たり前ではありますが、その街の魅力というよりは、野球部の魅力で進学先を決めます。

一方、只見高校が実施している留学制度は正式には、「山村教育留学制度」と言い、只見高校の振興及び只見町の地域活性化、定住・交流人口の増加を目的とした留学制度になります。(令和4年度只見町山村教育留学生募集要項による)

つまり、野球部を含めた部活動の強化ではなく、町外から留学してきた高校生に、只見町を体験し知ってもらうことで、只見町全体の活性化に繋がることが、この「山村教育留学制度」の主目的になるのです!

実際に、留学してきた寮生たちは、年に二回、町内で一斉に行われる、町民が総出で用水路の藻や泥などを取り除く作業である「堀払い」を地元住民の方々と一緒に参加したり、只見町の自然を体験してもらうべく、⼩さなボートの上に⽴ち、パドルを漕いで進む⽔上スポーツである、SUPの体験や沢歩き、冬には、スキー場で1日500円でスキー又はスノーボードが滑り放題になるなど、寮生活を送りながら3年間で、只見町を体験することになります。

令和2年度の只見高校の卒業生は38人、うち留学生が11人と、全体の約3分の1の留学生が、只見町の地域振興に貢献しただけでなく、寮生活を送ることにより、自身の成長にも繋げられたのではないかと思います。

また、「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』シンポジウム」という論文コンクールで、高校生部門の福島県知事賞に表彰された論文は、東京生まれ東京育ちの山村教育留学生が執筆した論文です!

そこには、東京ではむしろ避けていた人付き合いを、只見町に来て仲良くなった70代のおばあちゃんと交流することで、人と人との繋がりが大切だということを認識しこの人と人との繋がりの強さを災害時にも応用できるのではないか、ということなどを論じており、「山村教育留学制度」の集大成ではないかと、個人的には読んでいて思いました!

参考:極上の自然留学生だより 3月号 Special Ver. 発行:只見町教育委員会(3月15日発行)

野球部員の中にも、「山村教育留学制度」を利用して入学してきた生徒が複数人在籍しており「少ない人的資源の中での工夫」が、今回の選抜で21世紀枠として選出された要因でもあるのではないかと思います!


監督

最後に、只見高校を率いる監督を紹介しましょう。

1月28日に行われた、選抜の選考委員会での21世紀枠候補校・推薦理由説明会の際に東北地区理事で福島県高野連理事長の木村 保氏(20年センバツで福島・磐城高校を21世紀枠で出場に導いた方です)が、只見高校の推薦説明を行う際に、このような説明もしました。

「厳しい環境のなか野球部が頑張って活動できているのは、温かい地域のまなざしと町の力強い支援、そして監督の存在です

その「監督」というのが、今年で就任19年となる長谷川 清之(せいし)です。

長谷川監督自身、只見町の出身であり、現役時代は福島県の強豪校・学法石川高校の野球部に所属しており、3年夏には4番として甲子園出場に貢献しました!

長谷川監督自身は、只見高校の教師ではなく冬は除雪、夏は建設業の仕事に勤しむ、いわゆる外部監督という立場で、時間的に忙しいと思いますが、出身地でもある只見町の地方創生の為に、部員たちに情熱を持って指導に当たっており、甲子園出場を目指して来ました。

そして遂に、就任19年目の昨秋の県大会で創部以来初のベスト8を勝ち取り、21世紀枠にて、悲願の甲子園初出場を掴み取りました!

高校野球」において、監督を含む指導者の存在は、なくてはならないものです。

個人的には、只見町を知る長谷川監督でなければ、只見高校の甲子園出場はなかったのではないかと思います。

強豪校の監督をスカウトし、町外から実力のある選手を集めたら、もしかしたら甲子園に出場できる位の成績は残せるかもしれませんが、そもそも県立の高校なので難しいでしょうし、「只見町としての甲子園出場」という感じでは無くなってしまうでしょう。

只見町で生まれ育った部員、山村教育留学制度で留学してきた部員と共に、二人三脚で歩んできた長谷川監督は間違いなく、甲子園出場に大きく貢献した人物になるでしょう!



まとめ

今回は、21世紀枠に選出された只見高校の魅力について語っていきました!

部員が15人というハンデに加えて、雪で冬は屋外での練習が出来ないという厳しい条件の中で、甲子園出場を掴み取った只見高校野球部には、頭が上がりません。

これは、実際に努力してきた部員、指導してきた監督はもちろんですが、山村教育留学生を含めた只見高校の生徒、そして、只見町を支えてきた町民約4,000人全員で掴み取った甲子園出場ではないかと思います!

「『小さな学校の大きな可能性』への挑戦」。学校のスローガンを具現化した野球部。

厳しい条件下の中、甲子園という大きな舞台に出場しただけでも、凄いですが、まだ只見高校野球部の挑戦は終わっていません。

甲子園という大きな舞台で、只見町民を含めここまで只見高校をサポートしてきた全ての関係者の心を動かすようなプレーをして欲しいと思います!

私も、只見高校の戦いには注目しています!

 

今回はこの辺で失礼しますm(__)m



参考文献

 【一覧】センバツ出場32校完全データ 戦力評価、主なOB・OG付き – 高校野球ライブ速報 : 日刊スポーツ (nikkansports.com) 2022-02-11(参照:2022-02-13)

21世紀枠候補紹介:只見、選手13人の挑戦 山村留学で過疎地に光 選抜高校野球 | 毎日新聞 (mainichi.jp) 2022-01-14(参照:2022-02-01)

長谷川清之・只見高校野球部監督 : New ! ふくしまの高校野球と球児たち (livedoor.jp) 2021-09-25(参照:2022-02-01)

『豪雪地帯へ吉報を! 只見高校野球部』:TUF channel(YouTube) 2022-01-27(参照:2022-02-01)

山村教育留学制度とは?|只見町公式ホームページ|福島県 (tadami.lg.jp) (参照:2022-02-04)